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職場の問題(労災・過労死)

大枠のとらえ方

どんな場合に労災保険の給付を受けられるのか
 たとえば、工場で作業中にプレス機に挟まれて重傷を負ったり、あるいは自宅を出て会社に向かうまでの通勤途中に車に轢かれてけがをしたような場合、労働という特別な関係の中での事故ですので、労災保険の適用があり得ます。

 労災保険の適用を受けられる「労働者」にあたるかどうかのポイントは、指揮命令関係、労働の提供、対償としての賃金です。「労働者」にあたれば、パート、日雇いなどの雇用形態は問われません。ここでよく問題になるのは、一人親方の下請人など、元請人から独立して仕事をしていて、元請人と雇用関係にないのではないかと思われるケースです。そのような場合には、指揮命令関係にあるかどうかなどを個別の事情に即して検討していくこととなります。

労災保険の給付に関する処分に不服があるとき
 不支給決定など保険給付に関する決定に不服がある場合、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をします。そして、審査官の決定に不服があれば、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができます。
 さらに、審査会の裁決に不服がある場合には、処分取り消しの訴えという行政訴訟を裁判所に提起することになります。

過労死・過労自殺
 法的紛争に発展する代表格に、いわゆる過労死があります。ちなみに、「過労死」は法律用語や医学用語ではありません。過労死は、認定基準の上では、あくまで「脳・心臓疾患による業務上死亡」をいい、プレス機に挟まれたというような、業務上であることが明らかな「外傷」とは区別されます。そのせいか、業務とは無関係にもともと持っていた疾患だと認定されて、労災給付を受けられないことも多いようです。しかしながら、発症前の長期間にわたり著しい過重業務のあったことを詳細に立証して、これを覆した判例も出ています。  さらに過労自殺という言葉もあります。自殺は故意に自らを死亡させたのだから保険給付は行わないとされていますが、他方で、自殺が職場のストレスやいじめなどにより精神障害を発症した結果であった場合には、故意に自らの意思で死亡したのではないと考えられます。そこで、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷によって精神障害を発症し、自殺したことが認められれば、業務上の死亡であると認定されます。
 過去の事例としては、ある労働者が現場責任者をしていた工事で死亡事故が起きてしまい、警察対応や事後処理などで長時間の勤務を強いられ、事故から1か月後にようやく休暇をとって帰省しようとした当日に自殺してしまったという事件がありました。その事件では当初不支給決定となってしまい、審査官に対する審査請求でも結果は変わらなかったのですが、審査会によって詳細な調査が行われて遺族の主張が大きく取り入れられ、ようやく不支給決定が覆ったということがありました。会社側の言い分は、事故の責任を追及したわけではない、事後処理等のための勤務を強要したわけではないなどというものでしたが、本人にどれほどの心理的負荷がかかっていたのかを、その行動の異常性を詳細に明らかにすることで立証できたことが大きかったのではないかと思います。

労災事件のポイント
 労災保険の支給にあたっても、ほかの民事事件や刑事事件と同じく、重要なのは証拠です。当該労働者がどのような仕事を、どのようにしていたのかを、いかに具体的かつ詳細に立証できるかどうかがポイントです。
 残念ながら、会社は、その事故が労災であるとは認めたがらない傾向にあり、証拠の隠蔽・口裏合わせをすることも珍しくはありません。そのため、たとえば日記などで勤務時間や仕事の詳細、出来事等を詳細に記録するなどしておくことは大切でしょう。