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いじめ予防「子どもたちに何を伝えるか」

本年度から、文部科学省が弁護士による「いじめ予防授業」のモデル事業を開始します。私たちの取組が認められたと思うと嬉しくて、私もこのモデル事業に参加しています。

 

ただ、マスコミ報道では「悪口やたたいたりする行為が犯罪に該当した実例などを専門家の立場から説明。加害者側が軽い気持ちでした行為でも重大な結果を招きかねないことを学ばせ、抑止につなげたい考え」という整理にとどまっています。

後者の点は重要な1つとは思っているのですが、前者の点はどちらかというと「つかみ」に近い情報だと思うのです。でも、なぜか「弁護士の授業ならここでしょ!」という雰囲気になってしまうのです。

どうして?

 

そりゃぁ「いじめ」が犯罪になることはあります。

でも、それを子どもたちに伝えても「私たち、そんなひどいことしてないもん」と別世界の話になってしまうように思うのです。

「いじめ」は犯罪?じゃぁ、子どもたちの身近に日々発生している「いじめ」について、警察はどうして逮捕してくれないの?子どもたちが直感的に感じるであろうこの矛盾を思うとき、私は、この話は、つかみ程度の意味しかないんじゃないかと思うのです。

 

伝えるべきは「人権感覚」だと思うに至っています。

 

先進国と言われる多くの国が大切にしている価値観であり、世界の多くの優良企業が踏み外さないように意識している価値観です。保護者にとっても子どもたちに身につけておいて欲しい大切な感覚ではないでしょうか。

ちなみに、法学部出身者なら基本ですが、人権は道徳ではありません。日本の最高法規である憲法という法律に基づく権利です。そして人権感覚とは、形式的に「知ってるだけ」なのではなく、理解しそれに添う行動ができるまでに身についているかということです。ここへ向かう道筋を、どう手を変え品変え子どもたちに伝えるか。それが私たちの「いじめ予防授業」の狙いです。人権感覚が身につけばつくほど「いじめ予防」の実効性があがるだろうし、ひいてはその人権感覚が個々の子どもたちの未来の糧になると思うのです。「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする(弁護士法1条1項)」。弁護士がこの授業をする意味は、ここにあります。

あともう一息、このあたりのことも伝わって欲しいなぁ~。

 

2017年09月09日

訟廷日誌~Vol.03 刑事事件『勾留却下への道』(前編:勾留って何だ?)

逮捕(「逮捕状」が必要です)されると最長72時間(2泊3日)身体拘束されます(勾留請求の時間も含む。警察の捜査は48時間。)。これ以上の身体拘束には、裁判所の勾留決定(勾留状)が必要です。

 

【手続】

手続的には、警察の留置場から検察庁に護送され検事調べがあります。検事が裁判所に勾留請求すると次は裁判所に移動し、裁判官に弁解を聞いてもらう勾留質問の手続きがあります。その後、裁判所が、勾留の必要性があるのか(在宅でもいいんじゃないの)、勾留の要件(①住所不定、②証拠隠滅のおそれ、③逃亡のおそれ。)を満たしているのかを検討し、勾留を認めるか認めないかを決定します。

H28犯罪白書(H27統計)によれば、警察から送られてきた事件を検事が勾留請求する確率は92.7%、勾留請求された事件を裁判所が認めない勾留却下率は2.6%です。平成14年での却下率が0.1%であったことを考えれば若干却下率は上がってきていますが、それでも狭き門であることは違いありません。

 

【課題】

 これがなぜ痛いかというと、①素朴なところでは身体拘束が辛い(自由という人権を奪われている状態)ということであり、現実的なところではそんなに長期間出勤できない会社を首になってしまうという点です。もちろん、それは自業自得と言われても仕方ないような事件もありますが、中には、早く出たいがために嘘の自白をさせられてしまう場合(えん罪)や、それで会社を辞めないといけないというのはちょっとやり過ぎではないかと思える事件もあります。

 じゃぁ、そんなことに直面してしまったらどうします?

 狭き門ではありますが、何とかする道はまだ残されています。(つづく)

2017年09月09日